2012年6月14日取材
プラウド南麻布 (野村不動産、三井物産)
インプレッション1——定期借地権について
野村不動産と三井物産がフランス大使館旧館跡地に開発する「プラウド南麻布」は、定期借地権の新機軸と評価される。純粋な都心部=純都心部では今後定期借地権方式の物件が増える。その都心定借としての新しい工夫が豊富に打ち出されているのだ。
たとえば、同マンションの定期借地期間は60年————私は、以前からこの「60年定借」を増やすべきだと考えていた。それがようやく登場してくれたのだ。
「定期借地権」は、平成4年にできた新しい方式だ。借地期間を50年以上で任意に定め、建物は購入。「期間満了時に建物付き、もしくは更地にして土地を返還する」というのが、基本的な決まりとなる。
借地期間は「50年以上」と決められ、50年以上ならば何年でもよい。が、実際には「借地期間50年」という物件が大半だった。
これには疑問の声が多かった。50年では短すぎるのではないか、というのだ。
そこで、登場したのが、定期借地間を20年延ばした「70年定借」だ。ところが、70年定借にすると、今度は土地オーナー側に「長すぎる」という不満が生じやすい。実際、70年定借のマンションは数が少ない。私の記憶では全国で10物件に満たないほどだ。
そこで、50年と70年の中間……60年定借にしたらどうだろう。双方にとってメリットがある定借期間で、それを採用する物件も増えるのではないかと考えられる。だから、私は「早く60年定借が登場すればよいのに」と願っていたわけだ。
「プラウド南麻布」は待望の「60年定借」であり、私が知る限り日本で2例目の「60年定借」でもある。
インプレッション2——立地について
プラウド南麻布が建設されるのは、「フランス大使館旧館跡地」。フランス大使館が老朽化したのに伴い、新しい大使館が建設された。建設地は旧大使館の隣接地。新大使館が完成した後、旧大使館を壊し、その跡地に建設されることになったのがプラウド南麻布である。
新しくなったフランス大使館と共通のデザインテイストを持って建設。施工も同じ竹中工務店だ。
もともとフランス大使館は、江戸時代の武家屋敷跡地にあり、広大な庭園がそのまま大使館の緑として残されている。この緑はプラウド南麻布でも楽しむことができる。加えて、別の利点もある。
それは、庭園側からの視線を気にしないで済むことだ。都心部でも、公園に面したマンションは少なくない。しかし、公園からの視線を気にしないでよいマンションは希少だ。
一般的に、このような“絶好地”は売りに出ることがない。土地オーナーが手放したがらないからだ。しかし、定期借地権方式ならば出てくる。
つまり、プラウド南麻布は、定期借地権方式だからこそ実現した好立地マンションといえる。
インプレッション3——その新工夫について
全88戸の規模でしかも定期借地権方式のマンションであれば、共用部分はさらりと仕上げられて不思議はない。ところが、プラウド南麻布は違う。これまでにない工夫を多く実現させている。
たとえば、共用スペースに設けられるスポーツジムは24時間利用可能。広大な庭を眺めるためのラウンジがあり、外に出て緑を満喫するビューデッキも設けられる。ゲストルームはビューバス付き。朝7時半には有名パン店の出前が届くし、ネットスーパーを利用しやすいように、食材が届いたときに留守をしていても問題ないように、留め置きスペースが用意される。
大きな荷物を持ち帰ったときに便利なようにポーターサービスが付くし、機械式駐車場から車を出す時間を短縮するため、バレーパーキングに準じたシステムも考えられている。
戸数規模からすると、十分すぎるほどの施設とサービスだ。さらに、注目したいのは、同マンションの共用施設は“賃貸のオーナー”になったときでも利用可能になっている。
もう少し詳しく説明しよう。このプラウド南麻布を購入し、何年か先に賃貸に出す人がいるはずだ。賃貸に出した場合、賃借人はパーティルームなどの共用施設を使うことができる。一方で、住戸を賃貸に出した “大家さん”となる住戸のオーナーも、それまでどおり共用部分を利用できる。そういう決まりが設定されているのだ。 これは、従来のマンションでは聞いたことがない新しい工夫。そして、購入者にとっては大きなメリットになるシステムと評価された。
インプレッション4——住戸の魅力について
全88戸は69.08m2から192.70m2。一応「2LDK〜4LDK」となっているが、オーダーメイド方式のため、間取りの設定は自由。極端なことを言えば、2住戸を合わせて特大住戸をつくることもできるし、バルコニーに坪庭をしつらえたいという要望にも対応可能になっている。従来のマンションに設けられていた規制を見直し、「こんなこともできる」とチャレンジが行われている。
細かいチャレンジも多い。たとえば、窓サッシの桟が細くし、視界を邪魔しないようにしている。ドアノブと照明スイッチの高さを合わせ、実用性とデザイン性を高める工夫もある。いずれの工夫も多くの人にとってはたいした問題ではないかもしれない。しかし、わかる人にはたまらないポイントとなる。細かい相違点がわからなくても、「このマンション、どこか違う」と感じる人にも同様。プラウド南麻布は、都心高級仕様になっている。 では、分譲価格はどれくらいか。森と呼べるような庭に面する側の住戸で一例を挙げると約91m2の2LDKが9500万円からの予定。道路側の住戸は約72m2が6090万円からの予定だ。立地条件、建物のつくり、内容からして、抑えられた設定と評価される。
さらに、毎月払うランニングコストも抑えられる。プラウド南麻布は60年後に建物を解体せず明け渡す方式で解体費用を積み立てる必要がないこともあり、ランニングコストが抑えられる。マンション敷地の固定資産税+都市計画税の金額、それに定期借地権マンションのために設立された特定目的会社の維持費用を加えた額を案分するだけ。いわば、「純粋な必要経費だけを負担すればよい」方式で、地代が抑えられている。これは多くの購入検討者が納得し、支持する方式だろう。
インプレッション5——まとめ
これまで私は多くの定借マンションを見てきた。そのなかで、人気が高かった物件は、2割以上安かった……同じ場所で所有権分譲のマンションを売った場合と比べて分譲価格が2割以上安い、ということ。加えて、毎月支払う地代等が抑えられていることも重要。分譲価格とランニングコストが割安と判定される定期借地権マンションならば、注目度抜群で売れ行き良好になったわけだ。
一方で、割安の定期借地権マンションは、つくりが「並」になりがちだった。もちろん、世の中の一般的賃貸物件よりははるかに質が高い。しかし、分譲マンションのなかにあっては、「並」程度だったのである。「並」であり、新しい工夫を取り入れることもなかった。
その点、プラウド南麻布は、他に類を見ない工夫が多い。高級物件が多い都心部にあっても「上」もしくは「特上」の部類に入る。
その分譲価格は、ざっと判定して2割以上安い。内容を子細に観察し、「この内容ならば」という但し書きをつけると、3割以上安いかもしれない。
定借マンションはお買い得かどうかをシビアに判定される商品である。そして、購入者にとってお買い得にしようとすると、土地オーナーと不動産会社の利益は追求しにくい。これは、定期借地権マンションが抱えるジレンマだ。
結局のところ、定期借地権マンションは“サービス商品”として売られる性格のものなのかもしれない。滅多に出ないが、出ればお宝物件扱いされるような……。そして、お宝物件には購入者が殺到し、狙った住戸を手に入れにくくなる。つまり、「簡単には買えないこと」が、同マンションの短所といえるだろう。